German Sport Management

'スキマ時間にサクッと' をコンセプトにドイツのスポーツビジネス情報をシェア

ブンデスリーガ放映権はどのように分配されるのか

こんにちは、Shootです。

今日はメディア収益がどのようにブンデスリーガクラブに分配されるのかを紹介します。

権限を持つ機関や契約条件、分配時のクライテリアに加えて最後に計算例を説明する予定です。

 

4シーズンで46億4000万€

2016年6月DFL(ドイツサッカーリーグ機構)は翌年2017/18から2020/21シーズンの国内メディア権利契約に関する発表を行いました。

国内のメディア権利料は46億4000万€で、この額は前契約期間のおよそ85%増です。

また、DFLの発表によると2005/06シーズンから287%の上昇を記録。

それに加えて、国外放映権収益が期待できるため、1シーズンあたり平均して14億€以上のメディア収益が計算できるといいます。

 

17の権利パッケージ

ブンデスリーガ1部2部、入れ替え戦、スーパーカップの放映権合わせて全17パッケージが売りに出されました。

Pay-TV ではSkyが土曜日のコンフェレンス(複数切り替え中継)、土日のライブ中継、2部の全試合の放映権を獲得。

Eurosportは金曜夜と入れ替え戦、スーパーカップのライブパッケージを確保しています。(現在はDAZN、Amazonが引継ぎ)

土日ハイライトはARD、ZDFは土曜日の試合の二次利用の他にスーパーカップとリーグ前後半戦の開幕試合をフリーで中継。

インターネットクリップはDAZN、SPORT1は日曜朝から金土の試合の二次三次利用権利を所持します。

さらに音声権利はARDとAmazonが取得。これがAmazonにとって初めての欧州サッカーの権利獲得でした。

 

メディア収益の分配方法

まず初めにドイツサッカーの組織構造を簡単に説明します。

以前2020最新ブンデスリーガ決算報告書からわかる4つのことという記事でも書いたのですが、組織のトップはDFB(ドイツサッカー連盟)です。

このDFBからブンデスリーガの運営権利を与えられているのが、DFL(ドイツサッカーリーグ機構)になります。

つまり、今回のメディア権利による収益は一度DFLの元に集まり、定められた条件に基づいて各クラブに分配されます。

 

f:id:shootDE:20200607142210p:plain

Verteilung der Medienerlöse für die Spielzeiten 2017/18 bis 2020/21 (https://www.dfl.de/de/hintergrund/vermarktung/dfl-medienerloes-verteilung/)

新たなメディア権利契約に伴って、次の4年間(17/18-20/21シーズン)の国内収益分配方法の新モデルが決定しました。

現在は上記の図のように4つの柱から構成されています。

①Bestand

ここが収益の70%と大部分を占めます。このカテゴリーは比較的イメージしやすいと思いますが、過去5年間の順位に基づいて算出されます。

具体的には、1部優勝チームが36ポイント、順位ごとに1ポイントずつ減少し2部の最下位が1ポイント。過去5シーズンのポイントの合計で評価されます。

特徴は過去5シーズンのポイント比率が直近から5:4:3:2:1となっていることです。

最終的に最もポイント数の多かったクラブは5.8%、1部最下位が2.9%、2部1位1.69%、2部最下位0.75%を受け取ることになります。

②Nachhaltigkeit 

「持続性」を意味するこのカテゴリーではその名の通り20年間の順位が評価対象となります。ポイントの分配は1部が91-19、2部が18-1と大きく開きがあり、80:20の割合で振り分けられています。

①と異なる点は2つ。

ポイントの比重が過去20年間同じで最終順位が1部2部分けられていないことです。

③Nachwuchs

このカテゴリーでは若手の育成を推奨するため、23歳以下の選手を積極的に起用したチームが評価されます。

上記2カテゴリーとは異なり、ポイント制ではなく選手のプレー時間に基づいて順位が算出され、その時間に比例して収益も分配されます。

ただし、入れ替え戦や延長戦は考慮されず、外国籍の選手は満18歳までに登録済みであることが条件です。

④Wettbewrb

このカテゴリーは①とほとんど同じですが、3つの例外があります。

・1部2部合同で順位付け

・1部クラブは24位以下にはならず、2部クラブは13位以上にならない

・1-6位クラブは全て6.5%

つまり、CL,ELなど国際大会に出場するクラブは同等の評価を受けることになります。

 

具体例

先ほど述べたように4年間で国内メディア収益は46億4000万€。

これは平均すると1年あたり12億€弱ですが、2017/18シーズンは約10億€、20/21は約14億€と累進的に分配されるようです。

実際にDFLのレポートを見ると2017/18シーズンのメディア収益は国際大会を含めて12億4790万€でした。

というわけで、17/18シーズンの国内メディア収益を10億€と仮定します。

f:id:shootDE:20200607153538p:plain

Verteilerschlüssel 17/18-20/21. Frankfurt, 24.11.2016

この図は2017/18シーズンの架空クラブの具体例を記述しています。

①過去5年間のブンデスリーガ順位に基づいて5:4:3:2:1の比率でポイントを合算すると、リーグ1部の8位でした。このカテゴリーは全体の70%なので約7億€。そのうち4.75%がこのクラブの取り分なので約3350万€となります。

 

②過去20年間の順位に基づいて評価をするとリーグ1部2部合同で24位でした。このカテゴリーは全体のわずか5%で順位も低いため取り分は約80万€。

余談ですが①の順位と大きく離れていることとこのカテゴリーでは1部2部獲得ポイントの差が大きいことから、このクラブは過去20年間の中で2部でプレーしていた時期がある可能性が考えられます。

 

③ここではポイント制ではなく、選手のプレー時間に比例します。合計4585分に対して約2000万€の2.23%がクラブに分配されました。

 

④このカテゴリーでは3つの例外を除いて①と同じルールなので大きな変動はないことが一般的。特に中堅クラブでは例外による影響も受けにくいと言えるでしょう。

全体の23%約2.3億€に対する5.7%なので①に続いて大きな割合を占めています。

従って、これら4つのカテゴリーを合算すると、2017/18シーズン約4790億€がこのクラブの分配されることがわかります。

 

最後にブンデスリーガクラブの具体的なメディア収益額を知りたい方はDFL公式ではないですが、上記方法に基づいて算出された表がリンク先に掲載されています。

https://www.fernsehgelder.de/2020-21/ranking/

 

まとめ

ここまで異なる通貨で莫大な数字から小数点を用いて算出方法を説明してきましたが、今回覚えておくべき重要なことは以下の3つです。

・国内メディア収益は4シーズンで46億4000万€

・17の権利パッケージ販売

・4つの評価軸に基づいてDFLが各クラブに分配

 

また、以前このようなツイートをしました。

今回の記事で紹介した権利の契約は20/21シーズンまで。当初の予定では、5月に新契約の発表でしたがコロナの影響を受けて先延ばしになっている状況です。

Pay-TVではSkyを筆頭にDAZNとAmazon、どこでブンデスリーガが放映されるのか、さらにその契約料にも注目です。

 

それではまた!

shootde.hatenablog.com