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アディダスの国際化とグローバル戦略②

こんにちは、Shootです。

今日は前回に引き続き、アディダスのグローバル戦略に注目していきたいと思います。

shootde.hatenablog.com

 

グローバルオペレーション

グローバルオペレーションとは

プロダクトの開発や製造計画、調達、物流を世界規模でコントロールすること。

この部門はサプライチェーン内での効率性を改善することに努め、プロダクトの入手や納品、さらには高い質基準を保証します。

 

3つの優先事項

グローバルオペレーションは世界的にベストなスポーツカンパニーであるというミッションを支えます。

これはまず第一に、この部門が「最高のプロダクト」を開発、そのためのモダンなインフラ、プロセス、システムを整備することが大事です。

これらは革新的な素材や製造方法にフォーカスすることを可能にします。

次にグローバルオペレーションの目標は「最高のサービス」を提供することです。

アディダスは革新的な配送コンセプトを発展させ、オムニチャネル・アプローチを通してサプライチェーンをより機敏にすることでこの目標に近づきます。

最後に、責任感ある方法で顧客に「最高の体験」を提供することに努めます。

この部門は消費者に質、サイズ、色、時間、場所という観点から正しいプロダクトを提供することでブランドの魅力を高めます。

 

戦略的優先事項としてのスピード

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adidas FY Results(https://www.adidas-group.com/en/investors/financial-reports/#/2019/

この「スピード」は前回の記事でも紹介しましたが、アディダスのビジネスプランである''Creating the new''3つの柱のうちの1つです。

アディダスはプロダクトのトレンドを常に抑えることと入手可能であることに努めます。

言い換えると、消費者需要により早く反応するために需要に即して卸売店、小売店、eコマース異なる販売チャネルでプロダクトを提供します。

2019年はこの戦略的優先事項において、以下2つのアプローチと共に更なる進歩を遂げました。

 

Fast creation

アディダスは、ある定まったスケジュール後にプロダクトを開発するのではなく、ワンシーズンの中で消費者需要を反映し、素早い補充を保証できるよう移行を強く進めています。

目標は8ヶ月以内の開発期間を維持すること。それにより、より良いマーケットインサイトに基づいた購入判断が下されます。

 

Fast replenishment 

「スピード」アプローチを生産時間にも適応させるために、グローバルオペレーションは2019年短期的な注文を可能にすること、そして生産リードタイムをさらに縮めることに従事しました。

その際、60日以内の生産リードタイムを維持することに成功。

リードタイムの短縮に加えて、売れ筋商品の迅速な補充へのキャパシティを拡大。カテゴリーを跨いだ全体の20%は30日以内のリードタイムを確立しました。これにより、より価値の高い売上と在庫回転率向上に繋がっています。

 

Speedfactory

迅速なスポーツシューズの新たな生産プロセスをテストするため、そして新たな製造技術を発展させるため、アディダスは2017年にOechsler AGと一緒に2つのスピードファクトリーを建設しました。

ドイツ・アンスバッハとアメリカ・アトランタの両工場での生産は2020年4月に閉鎖。しかしこのスピードファクトリーの技術は今後アジアの下請け会社で導入される予定です。

 

未来の素材調達

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Fragen&Antworten zur Adidas×Parley Partnerschaft(https://www.adidas-group.com/media/filer_public/b2/5a/b25a6ca9-d06e-4fb9-abb7-e43a6982afcc/2019_adidas_x_parley_qa_de.pdf)

グローバルオペレーションの更なるフォーカスはニットやサステナブル素材のシューズなど先進的な素材を開発すること。

非営利団体Parley for the Oceansとのパートナーシップの範囲でアディダスは2019年リサイクル素材の使用を強化しました。

環境に優しい素材はますます需要が高まっています。そのためアディダスは特別な調達ユニットを組織し、2019年には糸でできたプロダクトのために用いるParley Ocean Plasticを調達するグループに新しくフィリピンを追加。

加えて、ドミニカ共和国を調達国として受け入れることで調達活動を小さな発展途上島国にも拡大しました。

PARLEY OCEAN PLASTICは、海岸や海沿いの地域で、海に流入する前に回収されたプラスチック廃棄物をアップサイクルして生まれた素材です。未使用プラスチックの代わりに、この生まれ変わったリサイクル素材を使用し、adidas x Parleyのスポーツウェアをつくり出しています。
海沿いで回収されたプラスチック廃棄物は、梱包され、Parleyの関連サプライヤーに運ばれます。そこで細かく裁断され、高性能のポリエステル織糸に再生されます。これがadidas x Parleyコレクションの素材となるPARLEY OCEAN PLASTICとなり、スポーツにも地球環境にも有益な素材として再利用されます。

https://shop.adidas.jp/sustainability/parley-ocean-plastic/

 

独立した下請け会社

生産コストを競争力ある状態に維持するため、アディダスプロダクトはほぼ100%独立した下請け会社によって製造されています。

2019年は138社、336カ所と前年(130社、289カ所)比較で増加。

このうち73%はアジアに拠点を構えます。

これら下請け会社の特徴としては、アディダスから生産と納品に関する詳細な仕様書を受け取り、効率的でハイボリュームなシューズ、ウェア、アクセサリーの生産について基盤のある知識を持つこと。

さらに前年の26社から2019年には45社が重要な戦略的パートナーと指定され、生産の大部分を担っています。

この上昇は2019年の顧客需要の増加に伴いキャパシティを高めるため、新たなウェア製造会社を受け入れたことで起こりました。

また、アディダスは長期的なパートナーシップを重要視し、重要な戦略的パートナーのうち85%は10年以上、36%はすでに20年以上共に働いています。

 

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Adidas Group Management Report(https://report.adidas-group.com/2019/en/servicepages/downloads/files/our_company_adidas_ar19.pdf)

2019年カテゴリーごとの上位供給国と独立下請け会社全体の生産量は以下の通り

シューズ:ベトナム(43%)、インドネシア(28%)、中国(16%)

(約4億4800万足生産)

ウェア:カンボジア(23%)、中国(19%)、ベトナム(19%)

(約5億2800万着生産)

アクセサリー:中国(37%)、パキスタン(22%)、トルコ(18%)

(約1億2700万個生産)

 

まとめ

・アディダスはW杯やオリンピックなどの国際大会と共に成長

・調達や生産、納品など世界各地の利点を最大限に活用

・アジアを中心とした独立下請け業社との長期的なパートナーシップ

以上の観点から、国際化とグローバル戦略はアディダスが世界的なスポーツカンパニーとして成長した、そして今後も成功し続けるための重要なファクターであると言えます。

 

今回アディダスに関して調べていて、個人的には2点興味深いと思ったことがあります。

1つはアディダスの創業から国際的な企業になるまでの歴史です。今回のテーマではざっくりとしか取り上げていませんが。

例えば、前編で少しだけ紹介したプーマとの関係やFIFA、IOCなど国際的スポーツ機関との関係です。

残念ながらドイツ語ですが、面白いドキュメンタリーがあるので一応貼っておきます。

youtu.be

 

もう1つは環境に配慮した商品の需要がますます高まる傾向にあり、リーディングカンパニーの1つであるアディダスは積極的にキャンペーンを打ち出しているということです。

この記事ではParley for the Oceanを紹介しましたが、直近のニュースではサステナブルシューズを取り扱うAllbirdsとパフォーマンスシューズの共同開発を発表しました。

僕は一消費者として、以前は商品を買う際にその素材や製造工程が環境に配慮されているかはほとんど意識していませんでした。

しかし、それを意識して購入する消費者が予想以上に多く、企業側も注力していることに気が付きました。

企業が環境に配慮した取り組みを行なっているかどうかは今後より大事な指標になってくるでしょう。

 

それではまた!

 

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