【ブンデスリーガ決算書①】19/20欧州サッカーへのコロナ影響は?
こんにちは、Shootです。
今回は「欧州サッカーへのコロナ影響」ということで、その一例としてドイツブンデスリーガの決算レポートを読み解いていこうと思います。
遡ること3月8日、DFL(ドイツサッカーリーグ機構)により最新版の2019/20ブンデスリーガ決算レポートが発表されました。
欧州サッカーではシーズンが年を跨ぎ、5,6月まで続くため、今回の19/20版がコロナの影響を受けた初めてのレポートになります。
欧州各国で様々な対応を取りましたが、ドイツブンデスリーガは第26節から無観客試合に切り替え、大幅な日程変更を実施してシーズンを締めくくりました。
ちなみに観客来場無しで試合を行ったのはリーグ史上初めてのことです。
経済的側面に目を向けると、これまで15シーズン連続でリーグ全体の売上高更新、自己資本比率も右肩上がりと好調を維持していました。
前編では主に売上高と収益源に注目し、後編では上記指標を中心にパンデミックによる業績の変化をレポートから見ていこうと思います。
基本的に金額表記時はm(Million€)を用いますが、桁が大きい場合は〇〇億ユーロのように単位を変更します。
ブンデスリーガの構造
まず初めにリーグの構造について少し触れておきます。
前述のドイツサッカーリーグ機構、通称DFLはブンデスリーガ1部と2部を管轄している組織です。
さらに厳密に言うと100%子会社であるDFL GmbHという有限会社(ドイツでは一般的)が実質的な運営を担っています。その役割はブンデスリーガ、スーパーカップ、入れ替え戦のメディア権利による収益を国内外で最大化することです。
そして、契約パートナーとしてそこで挙げた収益を権利所有者、すなわち各クラブに還元する仕組みとなっています。
この過程でDFLは組織として手数料を受け取り、GmbHの運営費用を賄います。
DFLとDFB(ドイツサッカー連盟)の関係性に関しては過去記事で説明しているので、こちらも興味のある方はリンクをご参照ください。
ブンデスリーガ1部・2部の売上高
さて、リーグの発展という文脈で最も注目される総売上高を見ていきます。
結論としては19/20シーズン1部と2部合計して45億ユーロ(4,500m€)でした。これは前年比5.7%減。この減額を大きいと捉えるか小さいと捉えるかは人それぞれでしょう。
冒頭で述べた15期連続の最高売上高更新はこのシーズンで途絶えてしまいました。
以下は前回レポートまでの売上高の推移を表しています。
このグラフから分かることは、45億ユーロという数字が2017/18シーズンの値を上回っており歴代2番目の記録であることです。
この1年間で社会が一変したことを考慮すれば、この結果は決して悪くないと言えるかもしれません。
次にこの売上高の内訳を見ていきます。
ブンデスリーガ1部収益内訳
1部クラブ全体の売上高は約38億ユーロ(3,800m)でした。
項目を個別に見た時に今回のコロナショックの影響を最も受けたのはグラフ青色のチケット収入です。無観客試合が直接的に響いた結果として、特別驚きはありません。
しかしながら、この363.5mユーロという数字は前年比155mユーロ減とかなり打撃が大きく、割合にして30%減に相当します。
次に減少が見られた項目はトランスファー収入で前年比約12%減。
とはいえ、この項目は移籍市場の流動性や大型移籍の成立有無に依存するので、もともと変動性の高いことが特徴です。よってコロナによる直接的な影響が大きいか判断は難しいでしょう。
メディア収入(放映権収入)は前年とほぼ同等レベル。従って、相対的に割合が高くなり、19/20シーズンは営業収益の39.2%を占めています。円グラフ面積の大きさは一目瞭然です。
この決算レポートによると、パンデミック前にライセンシングの一環として各クラブから提出された19/20シーズン予測と実際の数値との間にわずか数%しか乖離がないと報告されています。
つまり、それぞれのブンデスクラブがパンデミック以前に行った収益予測は非常に現実的な数字であったことを意味します。(チケット項目は例外)
これはこのシーズンでポジティブな要素だと言えるでしょう。
ブンデスリーガ2部収益内訳
ブンデスリーガ2部でも782mから726mユーロと売上高の減少が見られました。それでもこの数字は歴代2番目の記録です。
留意点として特に2部では昇降格クラブの経済基盤がリーグ全体に少なからず影響をもたらすという特徴があるため、常に一定の変動性があることも事実です。
要するに、この変動額だけでコロナの影響度合いを測ることは難しいでしょう。
1部と同様にパンデミック前の予測値は現実的でわずか数%のズレのみと報告されています。例外はコロナの影響を大きく受けたチケット収入と常に変動性を持つトランスファー収入の2項目。
そして、このカテゴリーで特徴的だったのがメディア収入の増加です。この状況にもかかわらず、6.4%の成長を達成。従って、前年よりもメディアの占める割合が高くなっています。
まとめ
前編で見てきた売上高とその内訳について簡単にまとめます。
売上高に関しては1部・2部どちらのリーグでも減少が記録されました。しかしながら、大幅な減少は見られず、共に前シーズンに次いで歴代2番目の結果となりました。
続いて内訳を見ると、チケット収入がパンデミックの影響を最も受けたことがわかります。これは第26節以降、無観客試合に切り替えたことを考えれば自然なことで大方の予想通りだったのではないでしょうか。
また、それに伴い、もともと最大の収益源として支えてきたメディア収入がより大きな割合を占めました。
というわけで、後編ではその他の業績について取り上げます。
P/Lに目を向けるとブンデスリーガ全体で9年ぶりに最終赤字を計上しました。パンデミックの影響をどの程度受け、また前年と比較してパフォーマンスに変動があったのか見ていきます。近日公開予定なので、こちらもよろしくお願いします。
それではまた!