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2020最新ブンデスリーガ決算報告書からわかる4つのこと

こんにちは、Shootです。

今回はDFL(ドイツサッカーリーグ機構)が発表している2020年最新の『2018/19シーズン決算報告書』を読み、重要な数字とそこからわかることをピックアップしようと思います。

www.dfl.de

 

ブンデスリーガの構造

まず初めにブンデスリーガの組織関係を簡単に説明します。

リーグは1部、2部それぞれ18チームの合計36チームから構成されています。この上位2カテゴリーを管轄するのがDFLです。

 

DFLはDFB(ドイツサッカー連盟)と''Grundlagenvertrag''という契約を結んでおり、ブンデスリーガのオーガナイズとそれに伴う経済的活動の権利が与えられています。

さらに厳密に言うと、このDFLは非営利社団法人のため100%子会社であるDFL GmbH(有限会社)がビジネスの執行を担っています。

 

大まかなお金の流れは、ブンデスリーガ1部、2部のメディアやライセンス権利によって得られた収入をDFLが各クラブに分配。

各クラブは、現時点では得られた収入の6.25%をDFLに支払うことになっています。

 

ブンデスリーガ1部

2018/19シーズンはブンデスリーガ1部の18クラブが史上最高額約40億2000万€の売上高を達成。これは前シーズンから5.4%の上昇で15回連続更新となりました。

このポジティブな経済発展はブンデスリーガが社会の中で高く承認されていることに一致します。

定評のある市場調査会社Kantarによると回答者の74%が「揺るぎない社会の構成要素である」とし、それぞれ67%が「ブンデスリーガが人々を結びつける」、「若いスポーツ選手にとって模範であり、モチベーションである」という考えを持っています。

 

世界一の観客動員数であることも忘れてはいけません。1試合あたり平均して42.738枚ものチケットが売れ、その99%が「他人にスタジアム観戦を勧める」と回答していることは、ブンデスリーガの試合体験に対する高い満足度を象徴しています。

さらに2018/19シーズンは1試合平均のゴール数が3.2とヨーロッパで最もエキサイティングなリーグでした。(プレミア2.8、セリエA2.7、ラ・リーガ、リーグ・アン2.6)

 

収益源

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公開データを基に筆者作成
チケット5億2010万€(12.9%)
スポンサー8億4540万€(21.0%)
メディア14億8300万€(36.9%)
トランスファー6億7510万€(16.8%)
マーチャンダイジング1億7600万€(4.4%)
その他3億2000万€(8.0%)
合計40億1960万€

 

トランスファー収益が過去最高額を達成。前シーズンから約4.5%up。

最大の収益源はメディア権利からの収益。前シーズンから約4%up。

一方でチケット、スポンサー、マーチャンダイジングが3-4%down。

この原因はブンデスリーガの構成にあります。つまり、多くの会員を有し、幅広いファン層とスポンサー、パートナー数の多いクラブが降格することで、特に広告や物販に影響を与えるということ。これは後述の2部のデータを見れば明らかです。

 

また支出面で特徴的なのが、トランスファー費用。クラブは8億€以上移籍金に充てていますが、2015/16シーズンと比較すると65%up。これはインターナショナルトランスファーの傾向が如実に表れています。

支出全体で39億€と4.8%up、その中で37%と大きな割合を占めるのが人件費でこちらも前年比8.6%up。

 

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自己資本率は18億€と前年比較13%大幅up。過去データを見ても順調な推移です。一般的に倒産しにくいと言われる40%を上回り、財政上安定していることがわかります。

 

ブンデスリーガ2部

収益源

チケット1億3130万€(16.8%)
スポンサー1億5810万€(20.2%)
メディア2億5050万€(32.0%)
トランスファー9630万€(12.3%)
マーチャンダイジング3830万€(4.9%)
その他1億750万€(13.8%)
合計7億8200万€

このシーズンはレコードイヤーで7億8200万€を記録、これは前年比28.5%up。

最大の収益源はメディア権利。2億5000万€以上で全体の32%、1億5800万€(20%)のスポンサーと合わせると上位2つで過半数を超え。

 

高まった人気が経済的な成功に繋がったとの見解。ブンデス2部の国民の知名度は85%と2013年の75%から一貫して上昇しています。

観客数においては、チケット販売1試合平均18.980枚と8.6%up。

これらの数値は前年1部から降格してきたクラブと密接に関わっていると言えるでしょう。というのも、そのクラブは人気の高いハンブルガーSVと1.FCケルンであったからです。

 

支出も7億6800万€と前シーズンから32%upで1部と同様に選手とトレーナー人件費が高い割合を占めます。

2部18クラブは約9100万€移籍に費やし、前シーズンと比べると2倍以上の額。

反対に移籍による収益も約9630万と€32%upしたため、2018/19シーズンはトランスファーにおいて530万€プラスでした。ちなみに前シーズンは3040万€プラス。

 

持続的な上昇

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ドイツブンデスリーガは15年間連続して売上高の記録を塗り替え、1部2部合計で48億€に達しました。

最大の収益源は国内外大会のメディア権利からの収益で全体の36%を占めます。2016/17シーズン以前は28%に留まっており、それ以降から明らかに上昇したブンデスリーガへの国内メディア契約は今後も高い報酬を支払うでしょう。

 

収益が増えた一方で支出額も過去最高を記録しました。その中で1部、2部クラブは施設などを含め、育成年代にも過去最高額を投資。累積して1億8600万€となり、前年比約1000万€増額しました。

 

2018/19シーズンは36クラブ中28クラブが黒字を達成。2年前は25クラブでした。1億4150万€の利益は過去5年間で2番目の結果です。

このシーズンで1部2部に直接的、間接的に従事した人がなんと56.081人。サッカーを起点に多くの雇用が生まれていることがわかります。

 

まとめ

細かい数字が並び全体像を把握しづらいので、タイトルの通り4つにまとめます。

 

①売上高は15年連続記録更新。それに伴ってクラブが使える金額も大きくなっており、事業規模が拡大傾向でした。

②独自の厳しいライセンス制度に加え、クラブの黒字化や自己資本率の推移から財政的な安定が大きな特徴。

③Jリーグと欧州主要リーグの違いでもありますが、ブンデスリーガも例の如くメディア収益が全体の大部分を占めています。スポンサーに依存しないクラブ経営という観点から、この収入源のもたらすメリットの大きさが理解できます。

④この年のブンデス2部の経済発展は前年1部から降格した2クラブの影響が大きいと考えられるでしょう。地域に密着したクラブは2部に降格しても多くのファンを引き連れ、経済効果を生むことがわかりました。

 

現在のコロナ状況化でどのリーグ、クラブも大きな打撃を受けていることは間違いありません。残念ながら、以上で見てきたレポートの経済発展傾向は一変するでしょう。

全てのクラブにはどんな方法でも存続してほしい、という思いで動向に注目しております。

 

それではまた!

 

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