【50+1ルール1/3】なぜバイエル社がレバークーゼンの株式を100%保持できるのか
こんにちは、Shootです。
ここ最近は家に篭りブンデスリーガ制度に関する論文をひたすら読み込む毎日を過ごしています。
今回のテーマはドイツ特有の50+1ルール。
サッカー好きであれば一度は聞いたことあるかもしれません。
それでも「企業名をクラブ名称に入れることができない」や「レバークーゼン法」など、結局複雑なルールのようなイメージを持つ人のために、わかりやすく説明しようと思います。
50+1ルールとは
本題の前にまず50+1ルールの理解が必須です。
DFL(ドイツサッカーリーグ機構)によると、DFB(ドイツサッカー連盟)の立法議会での議決により1998年にライセンスリーグの試合運営を資本会社に解放した過程で、50+1ルールが導入されました。
分かりづらいので補足をします。
ドイツには元々Vereinという地域クラブ文化があり、それらが現在のブンデスリーガを形成しています。つまり非営利団体でした。
そして1998年に、このVereinという親クラブから運営部門を営利の会社(以下資本会社)として切り離すことで資金調達やスポンサーの組み入れを可能にします。
その際、ブンデスリーガの競争状況にとってこの切り離しができる限り公平であるように、50+1ルールを導入しました。
「サッカークラブ(切り離されたクラブ運営をする資本会社)がブンデスリーガ1,2部参加へのライセンスを取得するためには、親クラブが過半数以上の議決権を持っていることが条件である」というのがこのルール。
※株式合資会社(KGaA)では過半数ではなく無限責任者である必要があるなど例外もありますが、今回はあまり重要でないので省略します。
少し細かいですが、この資本会社としてブンデスリーガクラブでは株式会社(AG)、有限会社(GmbH)、有限株式合資会社(GmbH&Co.KgaA)などの会社形態が利用されています。
また、議決権の話でクラブのことをe.V.と表記しているのを見るかもしれませんが、これは社団法人(eingetragener Verein)のことで記事内ではわかりやすく親クラブと呼びます。
なぜバイエルがレバークーゼンの株式を100%保持できるのか
さて、ここからが本題。
バイエル社はご存知の通り世界的な化学工業及び製薬会社です。2018年には遺伝子組み換え種子やラウンドアップで有名な米モンサントを買収したことでも話題になりました。
それではなぜ、制度の厳しいドイツでバイエルがレバークーゼンの株式を100%保持することができるのでしょうか。
それは、DFBが50+1ルールの例外を認めているからです。
例外の条件は以下の通りです。
「20年以上クラブを絶え間なく、著しく援助してきたこと。さらに今後も同じように続けること。」
この例外ルールを定める動機となったクラブがレバークーゼン(Bayer)とヴォルフスブルク(Volkswagen)でした。
その後2015年には第3のクラブとしてホッフェンハイム(SAP)が例外を認められています。
前提として僕らが普段レバークーゼンと呼んでいるのは上述の切り離し後の運営会社である''Bayer 04 Leverkusen Fußball GmbH''です。
本来50+1ルールによると企業の影響力は制限され、議決権の過半数以上を親クラブが保持していなければなりません。
しかし、このレバークーゼン運営会社の株を100%バイエル社が所有。
厳密に言うと、実は切り離し前の非営利サッカークラブはバイエルの従業員によって設立されています。
したがって、売名目的のクラブ買収や俗に言う金満クラブなどネガティブなイメージとは少し異なることがわかります。
これがDFBによって例外として認められている所以でしょう。
まとめ
いかがでしょうか。できるだけわかりやすい説明を心掛けましたが、法や規約に関する説明はどうしても複雑になりがちです。
上述の詳細は重要ではなく、どういう仕組みかだけ理解できれば良いと思います。
簡潔にまとめると、ドイツでは資金力のあるオーナーやスポンサーの参入によって秩序が乱れることを「50+1ルール」で防ぎ、一方で歴史的にクラブ支援をしてきた一部企業にはその例外を認めているということ。
よってバイエル社はクラブ運営を担うことができ、企業名をクラブ名称に入れることも可能なのです。
しかしながら、この50+1ルールと例外については様々な議論があるので、またの機会に取り上げてみようと思います。
それでは!
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50+1ルールの続編公開しました。興味のある方はこちらもご覧下さい。